『ビスネットの昼休みへようこそ♪』第七回 スーパー(第2回)

2021/02/10

こんにちは。パクチーです。寒さの中にも、春の気配が少しず
つ感じられる今日この頃。いかがお過ごしですか?
さて、福岡県でも緊急事態宣言が延長になり、先月から引き続
き、在宅ワーク絶賛奨励中でございます。それで困ったのがこの
コラム。タイトルが「ビスネットの昼休みへようこそ♪」なのに、
出勤日数激減で、ネタが見つからない…。個人的に非常事態のた
め、前回テーマの「スーパー」をもう少し引き延ばすことにいた
しましょう。
というわけで、日本初のスーパーがどこにあったのかご存知で
すか?

***************************
さて、ご記憶かどうかわかりませんが、前回、スーパーの売り
場には「右回りの原則」「入ってすぐは青果売り場」といったレイ
アウトのお約束があることを紹介しました。ただ、前回それを知
って、あのお約束が売る側の視点に基づくものであることに少し
引っ掛かりを感じました。というのが、右回りはともかくとして、
はいってすぐに青果売り場があるというのは消費者にとって、都
合がいいの?という疑問です。

確かに青果コーナーが入口にあると、彩り豊かで明るい感じは
しますが、最初から大根やら、じゃがいもやら、重いものを買い
物かごに入れて、店内を歩き回らなければならなくなってしまい
ます。
「それなら、カートを使えば?」と言われるかもしれませんが、
節約術の基本は、カートを使わないことだそうなので、私は極力
カートは使わないようにしています。(といっても、そんなに節約
を心がけているわけではありませんけど。エヘへ…。)

それから、献立を決めないまま買い物に行く人にとっては、ま
ずは魚か肉といったメインを決めてからの方が買い物を楽にで
きるのでは?という疑問。少なくとも、無計画な私は肉や魚を選
んでから、足りない野菜があることに気付き、青果コーナーに逆
戻りということがしばしば…。大した距離じゃないのかもしれま
せんが、通路が狭くて、かごをもってすれ違うのがやっとのスー
パーの場合、人の流れに逆行して、もう一度青果コーナーに戻る
のは、結構面倒。

というようなことを考えているうちに、いつから野菜売り場
が入口にあるレイアウトになったのかな?という疑問が生ま
れ、思いは日本初のスーパーへ…。

 

日本初のスーパーマーケットをどことするかには諸説あるそ
うですが、その一つが東京・青山にある1910年創業の果物商
「紀ノ国屋」。この店が1953年に日本で初めてセルフサービ
スとレジでの会計を導入したのがスーパーの始まりと言われて
います。ただ、この店は高級店で現在のいわゆるスーパーとはち
ょっと違うような…。
そこで、私たちが通常思い浮かべる低価格で総合的な食品を
提供する店こそが「スーパー」であるとする説も有力です。そし
て、そういう意味での最初のスーパーが、1956年に北九州市
小倉に誕生した「丸和フードセンター」。へえー、福岡に日本初
のスーパーマーケットがあったなんて全く知りませんでした。

さて、この「丸和フードセンター」のレイアウトがどうだった
のかがとても気になります。というわけで、調べてみたところ…、
ちゃんとこういうことを研究している人がいるんですね。ありが
たや、ありがたや…。レイアウト図が掲載されている論文*があ
りました。

このレイアウト図を見ると、入り口を入って壁沿いに、ぐるっ
と果物、卵、油、砂糖、みそが並び、店の奥には肉類、入り口と
反対側の壁にはすし、雑穀、陸干物(何これ?乾物のことでしょ
うか?)酒類、生菓子がレジのそばまで続きます。壁に囲まれた
棚には、佃煮や漬物、海産物、菓子、調味料といったものが並んで
います。野菜、鮮魚、鯨肉売り場もありますが、実は道路に面し
た屋外にあって、対面販売をしていたそうです。
今のスーパーに欠かせない豆腐、牛乳のようなものはなさそう
ですし(冷蔵設備が十分でなかったから?)、雑穀はあっても、
お米コーナーはありません。(当時は食料管理法があり、お米は
米穀通帳がなければ買えなかったんですね)その一方で、今は少
ししか置かれていないような商品(鯨肉、佃煮)も堂々と1コー
ナー設けられていて、需要が多かったことがうかがわれます。

というように、店内の様子は現在のスーパーとはかなり違いま
すが、日々買い物に行っていた主婦にとってこのレイアウトは買
い物がしやすかったのではないかという気がします。(あくまで
私の推測です)
その理由はやはり野菜と鮮魚の場所。今よりはずっと魚が食卓
に上がった時代、メインのおかずである魚をまず決めて、それか
ら店に入って足りないものを買い足し、最後に重量のある野菜を
買う。小売店とスーパーのおいしいところをとった感じだったの
かも…なんて想像が膨らみます。

スーパーのレイアウトが気になり始めてから、改めていろいろ
見ていますが、多くのスーパーが入り口に青果売り場、その奥に
精肉コーナー、鮮魚コーナーと続き、出口付近に惣菜コーナーが
あるというレイアウトです。(出口がもう一つの入り口になって
いる場合もあり。)
同じであるということは、初めて行くスーパーでも迷うことが
ないので、消費者にとって大きなメリットであることはまちがい
ありません。(そこは強調したい!)
ただ、その一方で、客の買い物スタイルに合わせて、よそとは
違うレイアウトの店がもっとあってもいいのにな…と思ってい
たら、やっぱりそういうお店もありますね~。
例えば、駅に直結するあるスーパーでは、入ってすぐにどどー
んと惣菜コーナーがあり、その奥に青果、鮮魚、精肉と続くレイ
アウト。まずは惣菜を選んでから、足りないものをかごに入れる
と一周で用事が足りるようになっているので、忙しい夕方の買い
物にはGOOD。仕事をする人だけではなく、高齢で調理の機会も
減り、お惣菜をよく買う人にとっても、最初に惣菜コーナーがあ
るレイアウトは好まれると思われます。

日本初のスーパーと現在のスーパーのレイアウトが違うよう
に、客の生活スタイルの変化に合わせて、スーパーも変わって
いきます。そんなふうに見てみると、普段訪れるスーパーも少
し違って見えてくるかもしれません。

*青木均著「小売営業形態成立の理論と歴史ー日本におけるス
ーパーマーケットの展開ー」同文舘出版、2020年