2016年4月 (株)山口油屋福太郎
2016/04/28
今回のご出演は、明太子や明太子せんべい「めんべい」でおなじみの山口油屋福太郎さんでした。
福岡市南区にある本社へおじゃまして明太子工場を見学し、3月にリニューアルオープンしたばかりの本社売店とカフェを利用させていただきました。
写真は山口毅社長です。
商売の楽しさに気づいた子ども時代
家は福岡の早良郡内野村で農業をしており、子どもの頃は、盆と正月に街中へ出て映画をみて、アイスキャンデーを食べるのが何よりの楽しみだった。
ある時、これを近所の農家の人たちに売ったらどうだろうかと思いつき、保冷箱もない時代のこと、仕入れたアイスキャンデーをタオルでくるみ、自転車に載せて売り歩いた。
農作業の休みによいと喜ばれ「人には喜ばれるし自分のこづかいも増える。商売っておもしろい」と強く感じ、将来は自分で商売をやりたいと思うようになった。
人との出会い
中学・高校で親しんだバスケが縁で東京の大学から誘われて進学。
食料の乏しい時代で、首相夫人が学生を招いて食事をふるまってくれるというので行ってみると、いろんな大学の学生やら国会議員やらが来ていて知り合った。
そこで渡米経験者が「アメリカで2日働くと日本の1ヶ月分の給料がもらえる」と話すのを聞いた。
どんな国かと興味をもち、渡米に必要だった招待状などを書いてもらえないかと、アメリカのいくつもの新聞社に手紙を送ったがその時はかなわなかった。
その後、皇太子ご成婚を祝し、各国へ日本の若者を派遣して親善を図る、と新聞に載った。
「熱意を測る温度計があれば自分が一番」と応募して選ばれ、アメリカ・中南米を巡る93日間の視察旅行の機会を得た。
出発に際してたくさんの方の祝福を受け、その時に岩田屋の中牟田喜兵衛さん、出光興産の出光佐三さんなど偉大な先輩方と出会い、お世話になった。以後その人格や考え方に影響を受け続けている。
家電販売業から結婚して義父の会社へ
大学を卒業後は家電販売業に就職。
この時にも取引先や研修などで感銘を受ける出会いがあった。
特に研修の講師だった当時リコー社長の市村清さんの著書『光は闇をつらぬいて』には大きな影響を受けたので、他の人たちにも是非読んでもらいたくて、1千冊を復刊してもらい、福岡市内の図書館に寄贈している。
一方で、独立して商売を始めるという夢は変わらなかった。
その前に結婚しようと思い、日どりと場所を決めて高校の後輩に案内状の印刷を頼んだ。
しかし相手はまだいない。するとその後輩が従妹を紹介してくれた。
会ってみると話がとんとん拍子に進んで結婚。
それが山口油屋の娘で、結婚して義父の会社に入ることになった。
山口油屋は食品油製造業を生業としていたが、油は、損は少ないとはいえ儲けも少ない。
油だけではやっていけず、業務用食品も扱うことにし、みんなで一生懸命働いたかいもあって売り上げは順調に伸びていった。
母の白菜づけをヒントにした明太子づくりと公正取引協議会
ある日、業務用食品を納めていたメーカーから辛子明太子をもらった。
早速食べてみたが、そのころの明太子は酒のさかなで、そのままでは辛くて食べづらい。
試しに酒で洗ってみると、辛味が適度にとれて美味しくなり、ご飯に合う味になった。
そこで「自分たちで明太子を作ろう」と思い立った。
実際に始めてみるとそれほど簡単なものではない。
試行錯誤する中で思い出したのが実家の母の白菜漬け。
聞けば2度漬けをしているという。
明太子で試してみると驚くほど美味しくできた。
こうしてようやく、ご飯のお供としての新しい明太子を売り出すことができた。
その後、明太子製造が盛んになり、業界も成熟していったが、原料高騰をきっかけに、底上げや過剰包装をする業者も出てきた。
そこで「全国辛子めんたいこ食品公正取引協議会」を立ち上げ、会長も務めた。
今では業界そのものが社会的認知を得て、安定した産業になったと自負している。
明太子せんべい「めんべい」誕生
明太子は軌道にのったが今度は日持ちがするものも作りたい。そう考えていたところに、たこせんべいをいただいた。
それを見て、せんべいに明太子を入れたらどうかと考えついた。
現在では全国各地の名産品を入れたご当地めんべいも作っている。
鯛の水揚げ日本一の長崎では「長崎鯛めんべい」、宗像ではわかめを入れた「宗像わかめんべい」、東京ではアサリ・江戸前海苔を入れた「東京スカイツリーめんべい」など。
話題性もあって手土産に喜ばれている。
●「老舗の品格」と「業務用食品のファクトリーストア」の2面性を楽しめる売店・カフェ●
奥にはカフェがあり、飲み物のサーバーも用意されていて、ゆったりとした雰囲気の中で寛ぐことができます。
また鯛茶漬けや海鮮丼などのランチメニューもあり、明太子と一緒に気軽に味わえます。
わいわい塾参加者に、特別に「福太郎の博多茶漬膳」をご提供くださいました。
メインの鯛茶漬けはもちろん、小鉢も充実しており、
日替わり明太子や和え物など、いろいろと味わえました。
● 明太子工場見学 ●
売店・カフェが入る本社のすぐ横に工場見学棟があります。
中に入ると見学専用スペースが用意されており、
特別に作られたアニメ仕立てのVTRで
明太子の話を楽しく見ることができます。
また部屋のカーテンが開くと窓の向こうは工場で、
奥には作業部屋に入る前にホコリを払い落とす
エアーシャワー室が見え、
手前では、全行程ほぼ手作業で行われるという
明太子づくりの最終工程が見られます。
特に「福撰めんたい」と呼ばれる、
特別に選ばれた明太子を木樽に詰める作業が
目の前で行われていました。
参加者との質疑応答
原料はどのようなものか?
品質や鮮度を大切にするために、主に北海道近海産のスケトウダラの卵を使用している。卵の成熟段階の中で最も明太子に適しているのは「真子」という状態だが、真子が取れるのは年に10日~14日間しかない。この時期に1年分を一括で仕入れている
明太子を二度漬けをしていると初めて知ったが、その効果はどのようなものか?
卵の中まで味がしっかり染み込み、うまみが増す
たらこは魚の卵だから一つずつサイズが違うと思うが、作業も変わってくる?
たらこのサイズや気温によって漬かり方はやはり違う。漬け込む時間を調整している。
明太子の日持ちはどれくらいか?
冷蔵で冬場は2週間、夏場は1週間、冷凍なら2ヶ月。一腹ずつラップで包んで冷凍しておき、食べる分ずつ冷蔵庫で解凍すると便利。
「福撰めんたい」は普通の商品とどう違う?
色、形、粒だちの全てが優れているものを選んでいる。贈り物に喜ばれている。
「千石の郷」に行きたいが車がないと難しい。
電話をいただければ迎えに行く。今からだとツツジの時期がおすすめ。平地より花の時期が遅く、天神テルラの庭で咲いてから2週間後くらいがちょうど花の見ごろになる。
■ 湧水千石の郷 : 福岡市早良区石釜333-2 TEL 092-872-4141
感想などアンケートの声 (一部)
- ウィットに富んだ社長のお話、とても気さくで楽しかったです。まだまだ聞いていたかったです
- 工場見学をして、衛生管理・計量管理が十分になされていると感じました
- 工場説明の方が明るく楽しくお話してくださいました。よく理解できました
- 「油屋」という名称がわからなかったが、歴史がよくわかりました
- 福太郎さんの明太子が二度漬けで作られているとはしらなかった。
- とてもステキなカフェでした。雰囲気がとても良かったです。
- 店内が床など木の作りで落ち着いており、素敵でした。店員の方もとても感じが良かったです
- 清潔で食事も非常に美味しい。値段も良心的で再度来たい店。
- ランチが大変美味しゅうございました。鯛茶漬けが最高でした。
- 福太郎の明太子はよく知っていたし友達にも送っているが、この様なカフェ・売店があることは知らなかった。天神「テルラ」にもあるという事だから行ってみよう。
- 昼食から始まり見学まで、スタッフさんの丁寧かつわかりやすい説明、他の従業員の方もとても感じがよく、素晴らしい対応でした。
企業情報
福岡県福岡市南区五十川1丁目1-1
TEL(092)475-7777
http://www.fukutaro.co.jp/
*本社売店営業時間 9:00~18:00
*カフェ 10:00~16:00(ラストオーダー)