わいわい塾

開催レポート

2014年6月 デリ&ビュッフェ くるるん

2014/06/18

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本日のわいわい塾は、福岡県三潴郡大木町の「食と農」がテーマの地域の旬の食材にこだわった健康地域応援レストラン「デリ&ビュッフェ くるるん」の代表取締役社長 松藤富士子さんにお越しいただき、大木町のこと、レストランのこと、またキノコについて詳しくお話を伺いました。

熊本県南関町の出身で、柳川の農家に嫁いだというのが農業を始めたきっかけです。農業は、3K(きつい、汚い、危険)5K(3K+休日がない、金にならない)と言われており、周囲は結婚を大変心配していました。しかし、いざ農業に携わってみると、田んぼの中に足を入れた時の気持ちよさを、野菜が毎日少しずつ成長していく姿を見て命の素晴らしさを、土や太陽の大切さを実感でき、毎日が大変楽しいものでした。29歳の時に主人が病気になり、自分が農業を背負って行くことになりました。自分の思い通りにやれるので楽しくはありましたが、経済的には苦しいものでした。何とか収入を増やすために、女性のグループで農産物直売所の運営や、農薬散布のためのヘリコプターや大型農業機械の免許を取得し、地域の農作業受託を始めました。高齢化が進む中、請負の仕事で何とか収入も増え、農作業受託というこんなやり方の農業もありかな、こんな風に女性が地域の農業の担い手となる方法もあるのかなと頑張りました。平成9年に主人が他界し、南関町の実家に戻ることになりました。

第2の人生、これからどうしようかなと考えていたところ、環境に高い意識を持った大木町から、女性だけの会社を作って農業をやってみないかと声がかかりました。知り合いもいない所だったのですが、町長さんや農協の組合長さん、キノコ部会の部会長さんまでもが声をかけてくれたことが嬉しく、再び農業の道に飛び込みました。

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人間いくつになってもチャレンジすることは大事!何かを始める時に遅すぎることはない!!

大木町では素敵な仲間たちが迎えてくれ、女性だけの農業組合法人「モアハウス」を設立しました。現在では、モアハウスの理事、株式会社ビストロくるるんの代表取締役、道の駅おおきの駅長と、3足のわらじを履いて、大木町で活動しています。

 

循環の町 大木町 ~大木町ってこんなところ~

siryoutoomiyage.jpg三潴郡大木町は福岡市天神から約1時間。西鉄電車の八丁牟田駅から徒歩20分。人口は15,000人ほどの小さな町です。平成の大合併の時も、近隣の久留米市や筑後市などとの合併はせず、小さい町だからできる良さを保ちながら、素敵な町を作り上げてきました。農業がとても元気で、福岡県内でもベスト5に入るほど財政状態は安定しています。また、キノコの町としても有名で西日本一の産地です。町内には会社としては13社、個人農家としても30軒ほどがしめじやエリンギ、えのき茸、雪嶺茸などいろいろなキノコを栽培しています。

 

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また、「もったいない宣言」を公表し、大木町の環境政策の根幹となる「おおき循環センター(バイオガスプラント)」を建設しています。バイオガスプラントでは、これまでゴミとして焼却・海洋投棄していた有機物(生ごみ、し尿、浄化槽汚泥)を発酵処理し、発生したメタンガスを燃料にして電気や熱エネルギーを発生させ、施設内で利用、また残った消化液を有機液肥として農業に役立てています。

お土産でいただいた幻のキノコ「雪嶺茸(大木町産)

☆農事組合法人 モアハウス

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農事組合法人とは農業従事者3人以上で組織され、株式会社や有限会社と同じ会社組織ですが商法ではなく農協法に基づくものです。

モアハウスは、平成9年に農家のお嫁さんが集まって女性だけで起業し、平成10年よりキノコとアスパラガスの栽培を行っています。栽培規模は大きくありませんが、女性ならではの経営で、「締めるところは締める!」無駄遣いをしない経営で非常に安定した収益を確保しています。

 

 

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また、生産した農作物を加工して付加価値を付けて販売する6次産業にも参入しています。本日試食していただいた「きのこご飯」など加工品は、非常に手がかかり、利益はほぼありません。大切に育てた農産物を一つ一つ丁寧に加工するため、少ししか製造することが出来ません。価格も安く大量生産できる大手メーカーと同じ土俵で戦うことはしていません。限られた場所で、商品の良さを説明して納得していただけるお客様に販売しています。美味しくて喜んでいただければ、今度は自分で作ってみようかな、とキノコを買っていただける。加工品の販売は、キノコを食べる人を増やす仕掛けと考えています。

 ☆株式会社 ビストロくるるん

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おおき循環センターの横の1haほどの空き地の有効利用の為、平成20年に街づくり委員会が開かれました。

そこで、循環センターでできた液肥を使って元気に育った野菜やお米を食べてもらえる場所「レストラン」を提案しました。最初は町中のごみやし尿、いわゆる汚いものを集める場所の隣で、食べ物を扱うのは好ましくないと反対を受けました。しかし、循環センターは町の迷惑施設的なものではなく持続可能な循環型社会を目指す町の中核施設であること、この施設を見学に来られる方にここでできた液肥によりおいしい作物が育つということを、間近で感じてほしいとの思いを最初は女性が、最終的には町のみんなが理解してくれ、農家の女性3人で「デリ&ビュッフェくるるん」を立ち上げました。

食べたいものを食べたいだけ食べられる(残さない)、野菜には旬があり、同じ食材からいろいろなメニューが提供できる、メニューありきではなく食材ありきのレストランにしたくて、ビュッフェスタイルとなっています。老若男女、大食い・小食、色々な方に対応できるように、普通の家庭で作られるような和食からちょっとお洒落なイタリアンなど常にバラエティに富んだメニューを準備しています。四季折々の野菜を使った料理には化学調味料や添加物を使わないようにしています。

メニューは季節ごとに変えており、その都度「メニュー検討会」を行っています。スタッフ全員で一人2種類以上の料理を作り名前を隠してみんなで試食。人気投票を行い1等賞になれば賞金も準備していますし、人気のあるものをメニューとして採用しています。町民の皆さんにも参加してもらえるよう一般参加も受け付けています。

従業員の面接では、大根や白菜など食材を渡し、「今からこの野菜で料理を作るとすると何を作りますか?」という質問をしています。日頃から料理に馴染みのある人は、やはりいろいろなメニューを思いつきます。

結局、40代~50代の家庭の主婦や料理人を目指す若い女の子が採用となり、社員は女性ばかりになりました。

 

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本日、試食したコロコロエリンギ。レストランでも大人気メニューで、エリンギを油で揚げて、甘辛いたれで和えるだけ。独特の食感で大変おいしくいただきました。

 

 

キノコについて~九州で三人しかいないキノコマイスター~

九州で3人しかいない「キノコマイスター」の資格を取得し、キノコの良さの発信もしています。

キノコの日本人1世帯当たりの1日の消費量はなんと17g。シメジだと2~3本程度。

もしも、消費量を50gにすると日本の医療保険で支払っている医療費が半減するとの試算が出るほど体に良いものと、キノコの機能性は大変注目されています。医療関係者の研究において、キノコを食べることで、血圧や血中コレステロールを下げる働きに良いというデータも出ました。また、がんをやっつけると言われているNK細胞を活性化させる働きにも注目され、血液をきれいにし、血液の循環が良くなるということもわかってきています。

キノコは「菌」で、いわゆるカビの集合体です。原木を分解しながら育っていきます。人間の体の中に入っても同じで、体の中をきれいに分解してくれます。脂肪と糖を一緒に分解できるのはキノコだけ。またキノコの繊維質がお腹の中をきれいにしてくれるので、ダイエットにも非常に効果的だと言われています。是非、今のうちから毎日キノコを食べて、病気をしない体づくりをしてほしいと思います。

キノコの保存法

キノコを冷蔵庫に入れておくと数日でカビが生えてしまいます。余ったキノコは、ほぐして軽く乾燥させれば何日か持ちますが、おすすめは冷凍です。

凍ることによってキノコの細胞壁が壊され、体に良い栄養成分が食べた際に吸収されやすくなります。

キノコの90%は水分でできており、解凍してしまうと栄養成分をたっぷり含んだ水が出てしまいますので、解凍せずにそのまま調理してください。

最後に

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会場からTPP等に関する質問がありました。

農業はTPPという大きな問題に直面していますが、個人的には反対ではありません。自分たちが作っている物に自信があります。自分たちは生産者でありながら消費者でもあります。賢い消費者がちゃんと選んで、自分たちの商品を納得して買ってくれる人たちがいるので、海外の安い物は怖くありません。

また、農業の後継者不足が心配されていますが、大木町には新しく農業を始めたい人のために「おおき農場塾くるるん」が設立されました。農地や農業機械の貸し出し、農業の技術指導を行っており、農業を志す人たちを育てて送り出すという仕組みになっています。塾生はまだ研修中ですが、もうすぐ自立できると思います。農業は厳しいとか、儲からないとか思われがちですが、お金儲けだけでなく、農業は生きていくうえで大切なものだと理解して、農業に飛び込んでいる若者が増えてきたことを嬉しく思っています。

 

モアハウスやデリ&ビュッフェくるるんの経営。今までがむしゃらに仕事をしてきましたが、ただお金を稼ぐのではなく、時間を町のために使いたいと、今年の4月から道の駅おおきの駅長に就任し、大木町のため、社会貢献活動にも力を入れています。

 

 

<感想などアンケートの声>

  • 日本の農業の将来は暗いのではないかと思っていましたが、女性の活躍で明るい光が見えて来たようで嬉しく思いました。これからもがんばってください。
  • 農業家として今までの生き方を活かした考え方や一生懸命さに感銘を受けました。
  • 目先の利益にこだわらず頑張ってこられたことが、成功の秘訣だったのだなと感じました。
  • ユーモアに富んで分かりやすいお話の仕方で引き込まれました。
  • 女性のたくましさが嬉しく思いました。見習いたいです。
  • 松藤社長の仕事のお話から大木町の良さまで伝わってきました。
  • 松藤社長のパワーと思いが伝わりました。TPPや農協、町での取り組みについて良く理解できました。ぜひ見学・遊びに行きます。
  • バイタリティーあふれるお話、とても感銘を受けました。又リサイクルの仕組みはとても素晴らしいと思いました。大木町のことを知ることができ良かったです。
  • 地域コミュニティの活性化が難しくなっていますが、私たちが日々暮らしている、私たちの町にとって良い参考になると感じました。一度現地を訪ねてみます。
  • 小さな大木町が自然の恵みを最大限に利用した「循環の町づくり」や「キノコの町づくり」等々、きつい農業に楽しく取り組んでいらっしゃることに感激しました。松藤さんの朗らかな声と説得力のあるお話に元気をいただきました。是非大木町に行ってみたいと思います。
  • 社会貢献活動を無意識な中で始めていらっしゃる姿は自分も目指すものです。すばらしい。
  • 大木町がキノコの生産が西日本一であることを初めて知りました。
  • キノコは値段が安定していて安いので良く利用します。レシピによって料理のバリエーションが広がるので近いうちにレストランにお邪魔したいと思います。
  • キノコのヘルシーさや効用が、良く理解できました。もっとキノコを食べないといけないなと思いました。
  • キノコマイスターならではの知識と、経営者としての知識や知恵、全体を見渡すバランス感覚など、とても感動しました。
  • モアハウスのブナシメジは分量が多いので、店頭に置かれるときは是非保存方法をPOP広告などで教えてみては。
  • 試食のキノコご飯の素は味が薄味で美味しかった。一度レストランで食べてみたいです。作り方がレシピ本にあったので、ぜひ作ってみたいです。
  • いただいたレシピブックを参考に、体にいい優しいご飯を作りたいと思います。
  • 循環センターの仕組みを見せる意味でのレストランという発想が良いと思いました。またメニュー会議や採用の話、女性のアイデアは素晴らしいと思いました。
  • いろんな機会で利用してみたいです。
  • 商品を選ぶときには生産者の信頼関係を大事に食材を選んでいます。大木町にはぜひ頑張ってほしいです。

 

企業情報

株式会社  ビストロくるるん

健康地域応援レストラン デリ&ビュッフェ くるるん

福岡県三潴郡大木町横溝1331-1
ご予約・お問い合わせ 0944-75-2151