2013年9月 ゼンカイミート(株)
2013/09/20
本日は、ゼンカイミート株式会社代表取締役 萩原新一様 営業部 下田博則様にお越しいただき「牛肉を通じて消費者と対話したい!」と題しまして、ゼンカイミート株式会社の取組み、牛肉について詳しくお話を伺いました。
ゼンカイミート株式会社について
ゼンカイミート株式会社は親会社である全国開拓農業協同組合連合会(以下全開連)の「全(ゼン)」と「開(カイ)」の二文字をとって「ゼンカイミート」という名前で1989年(平成元年)に設立された、食肉加工会社です。
全開連は戦後、食料増産のため中山間地域に入植しましたが、なかなか普通の作物(米や麦など)が出来ず、畑作をあきらめ家畜を始めた人たちの組合です。
当時は、ホルスタインのメスは乳牛として、オスのホルスタインは利用価値がなく間引きされていました。
昭和40年頃からアメリカにならって日本国内でも牛肉が食べられるようになりましたが、和牛は価格が高く手に入らない状態。そこで、間引きされていたホルスタインのオスを食用として流通させるようになりました。
当初、全開連の専用のと畜加工工場はありませんでしたが、「自ら育てた畜産物を直接自らの手で消費者に届けたい」という生産者の思いから、と畜場の横に食肉加工工場を併設し、と畜から出荷までを一貫して行っています。国産ならではの、きめ細かい管理のもと安全に肥育された美味しい牛肉のブランド化を進め、売上高は40~50億円の企業に成長しました。
「食」の安全を徹底追及
「商品の衛生管理こそが会社の大切な商品である」が企業の基本コンセプト。
①2003年にはJQA(日本品質保証機構)のISO9001-HACCPシステムの認証を取得
②敷地内にBSE検査室があり毎日全頭検査実施
③取扱う牛肉は全国開拓農業協同組合連合会傘下の会員(鹿児島、宮崎、熊本、佐賀、長崎)が農協の指導により肥育された生産者の顔が見えるもの
④健康な牛を育てるため、病気にならないよう予防に努め、抗生物質や薬、成長ホルモンに頼らない
バーベキューハウス「オアシス」
従来、と畜場という3K(怖い、汚い、臭い)な所と思われていましたが、敷地内にバーベキュー施設を整備して地元の皆様に開放し、牛肉に親しんでもらう「場」の提供をしています。
ログハウス風の建物「OASIS(オアシス)」は1階が工場直売所で、2階は厨房を備えた多目的ホール、駐車場は、120人が収容できるバーベキュー施設となっています。地元の子供たちを招いて食育イベント「収穫祭」や親子料理教室などを定期的に開催しています。 口コミでどんどん広がっていき、今年は3月から9月までで5千人位の利用者が訪れました。
日本初「ハラル認証」取得
中小企業が生き残る方法として将来的に国内のマーケットは縮小し、今後競争は激しくなると予測し、海外マーケットへの展開をめざし、他社に先駆けて「ハラル認証」を取得し、「ハラルビーフ」を販売開始しました。
「ハラル(HALAL)」とはイスラム教の戒律で「許されたもの」を意味し、イスラム教徒が飲食できる食品等のことです。
ハラル食品を販売するためには、その原材料や製造工程(と畜方法や設備含む)等の審査を受けて、イスラム教の禁ずる豚肉やアルコール類等を使用していないこと等、イスラム教の戒律にしたがって製造していることを「認証」してもらう必要があります。これによりイスラム圏の人たちに美味しい日本の牛肉を食べてもらうことが出来るようになりました。
大学の学食やリゾートホテルからも引き合いが来るなど、活気のある市場となっており、7年後の東京オリンピックでも世界中の人に世界一美味しい日本の牛肉を提供できます。
ゼンカイミートの取扱商品
ゼンカイミートが取り扱っている牛は、鹿児島、宮崎、熊本、佐賀、長崎の約150戸の生産者が育てています。主力は、「宮崎ハーブ牛」「宮崎ハーブ牛F1(交雑種)」「開拓牛」の3種類。
高価な黒毛和牛と違って「国産牛」なので手ごろな価格で提供できます。
「宮崎ハーブ牛」はオス・メスがホルスタイン種、「宮崎ハーブ牛F1(交雑種)」はオスが黒毛和牛・メスがホルスタイン種。ともに餌はハーブやビタミンEを配合した配合飼料で肥育された牛です。
「開拓牛」は鹿児島、熊本、長崎が産地のオス・メスともにホルスタイン種。餌は非遺伝子組み換えDHFとうもろこしを原料とした配合飼料で肥育された牛です。
「なっとく!商品」にも認定されている宮崎ハーブ牛
宮崎ハーブ牛は【美味・健康・安全・安心】を徹底追及した製品です。
①製品コンセプト
- ハーブ(ジンジャー、シナモン、オレガノ、ガーリック)とビタミンEを強化した健康的な「専用飼料」で肥育。牛も赤ちゃんの頃は病気になりやすく大変手がかかる。健康に育てるために注射や薬品に頼らず、牛の本来持っている免疫を生かすためにハーブの効用を利用している。
- ホルモン剤・抗菌性飼料添加物を添加しない肥育体系
- 顔の見える生産体系・・・宮崎県乳用牛肥育事業農業協同組合の参加牧場が出荷まで責任を持って肥育
②製品特長
- ビタミンEが豊富(一般牛の4倍)で鮮度が保持でき、ドリップの流出が少なく旨味成分を逃さない
- 不飽和脂肪酸、特にオレイン酸の割合が高い
- 脂肪の融点が低く、口溶けの良い脂肪
☆本日の試食
「宮崎ハーブ牛」のモモ・リブロース「宮崎ハーブ牛F1(交雑種)」のモモ・リブロースのしゃぶしゃぶを試食
「宮崎ハーブ牛」は脂肪の融点が低く、口どけが良くジューシーなのが特徴で、「宮崎ハーブ牛F1(交雑種)」は和牛により近く、肉に適度なサシが入っており脂っぽくなく上品な味。
しゃぶしゃぶにする時もあくが出にくいのが特徴だそうです。
参加者からは、 「和牛と比べるとさっぱりして、たくさん食べられる。」という声があがりました。
通信販売について
「大切に肥育された宮崎ハーブ牛も消費者に届くときには一律「国産牛」という表示になってしまう。」
安心で安全で美味しいゼンカイミートの牛肉をブランド名である「宮崎ハーブ牛」の名前で消費者に届けたいと考え、インターネットでの通信販売を行っています。もっと手軽に通信販売を利用できるように、FAX用の注文用紙を作りました。チルドでの受注が基本ですが、冷凍での受注も承ります。ご家庭の冷凍庫で1ヶ月以上保存することが可能です。
真空パックで冷凍された牛肉は暗紫食に見えることがあります。ですが真空パックを開封すると、肉面(筋肉中のミオグロビン)と空気(酸素)が結合することにより、鮮やかな紅色となります。
最後に
2001年に発生したBSE問題、食肉偽装、口蹄疫の流行などにより牛肉の需要が急減。牛肉を取り巻く状況は大変なものがありました。しかし、「ピンチはチャンスに変えられる」という強い信念で、新たな挑戦に次々と着手されてきたゼンカイミート。
「安心・安全で美味しい牛肉」を提供しているゼンカイミートをこれからも応援していきたいと思います。
<参加者と企業の意見交換>
Q.ハーブはエサの中にどのくらい比率で入っていますか?
A.一頭一頭徹底して管理されており、成長に応じて比率は変えています。
人間でいう赤ちゃんから中学生になるまでは病気になりやすいので結構な比率で加えています。
Q.牛は大人になるまで何年かかるのですか?
A.通常の牛は22~23か月、F1(交雑種)は26か月、和牛は28~30か月です。
Q.ハラルビーフと通常の牛肉は、何が違うのですか?
A.牛自体は同じですが、育てる時の飼料にアルコール(ビールかす)などを与えていない牛。また、イスラム教徒が牛を食用にするときはまず、お祈りを唱えて処理をしています。
Q.会社は熊本なのにどうして「宮崎」ハーブ牛なの?
A.熊本にある工場で、熊本産「味彩牛」、佐賀産「和牛日和」、宮崎産「ハーブ牛」など様々なブランド牛を扱っています。
Q.一日に何頭処理しているのですか?
A.だいたい40頭くらいです。
Q.宮崎ハーブ牛のビタミンを強化した飼料とあったが、「ビタミンE」ってなんですか?
A.小麦胚芽などから抽出した粉状のビタミンEです。
Q.一般的なスーパーで販売しているお肉はホルモン剤など添加物を使ってる?
A.お弁当に使われている防腐剤と同じように認められた抗菌剤、抗生物質などが使われています。
基準は守られていると思います。
Q.ゼンカイミートの牛肉はスーパーで買えますか?
A.スーパーには納品していますが、「国産牛」と表示されているため、実際には「宮崎ハーブ牛」として買うことはできません。本来は、「宮崎ハーブ牛」の名前で置いてほしいのですが、スーパーは欠品をしてはいけないのでかなりの量を確保しないといけないなどの取引上の条件があり、残念ながら、ブランド名で販売するのは困難な状況です。
Q.日本人の1年間の牛肉の消費量はどのくらい?
A.消費量・・・BSE前まで100万トン(輸入牛肉40~50トン・国産牛20~30トン)
最近は、80~70万トン(輸入牛肉40トン・国産牛20~30トン)
Q.今後TPP参加で畜産業に影響はある?
A.酪農(牛乳)に影響がでます。日本の酪農家は補助金で生産を補償してもらっているのに対して、オーストラリアやアメリカの酪農家は牛乳のみで生計を立てています。日本が100円としたら輸入品は10円くらいなので、酪農家は厳しい状況になると思います。酪農があるから牛が存在しているので酪農がつぶれると日本の畜産はダメになってしまうのではないかと危惧しています。
<感想などアンケートの声(一部)>
- 「ハーブ牛」初めて知りました。ホルモン剤や薬、添加物を使用していない、「安心・安全な牛肉」ということがよく理解できました。
- お肉は現品を目視して使用する分だけ買うので、通販でしか買えないのは残念。
- 「和牛」「国産牛」「外国産牛」の違いがよくわかりました。家にいないことが多いので、スーパーで買えるといいなと思いました。
- 宮崎ハーブ牛F1のリブロースが美味しかった。
- 飼育用飼料は4種類のハーブやビタミンEを入れていること、1頭ずつちゃんと管理されていることがよく分かった。
- 「顔の見える生産者」として、安心してお話を聞けた。牛の種類についてよく理解できた。
- 毎年ステーキ肉など贈答用で購入しているが、大変喜ばれている。
- ハラルについては現在全国的に注目を集めているが、数年前から取り組まれていることには非常に感心している。この先進的な取り組みについてもっと深く話を聞きたかった。
- ISO9001,HACCPの認証取得されていることに、企業の姿勢が如実に示されていると感じた。
- 今まで和牛とホルスタインの牛肉の違いを知らなかった。和牛、国産、輸入品等の表示方法を理解できました。
- 良い商品は絶対売れると思いますので、頑張ってください。応援しています。日本の牛肉を守ってほしい。
- 牛に予防注射や薬を与えるより、ハーブで健康を管理しているという所に感動!安心して食べられます。
- 実際に試食すると味の違いがよく分かった。牛肉は高いというイメージがあり、スーパーで値引き品や切り落とし肉などを利用することの方が多かったのですが、安全な牛肉が美味しく食べられることを考えれば、通販を利用しても良いかも・・・と思いました。
- 衛生面やハラルなどの取組は良いことだと思います。近くで買えればぜひ利用したい。
- 通販でしか買えないのは残念。送料を使ってまで買うのは難しい・・・
- 今まで「国産なら・・・」とあまり考えずに買っていたが、今回お話を伺って、買い物する時の良い参考になった。
- 試食をしてこの美味しさでこの価格!安さにびっくり。ハーブ牛は安心して食べられる。
- 牛が大人になるまで1頭1頭きちんと管理されていること、国産と輸入牛の違いはエサや育て方に大きな違いがあること、世界一美味しいお肉だということが良く理解できた。
- 国産の食品を守ることが大切。ゼンカイミートの心のこもった生産に感謝!!身近で買えるともっと良いのに・・・
- 世界でもトップクラスの美味しい牛肉を食べられていることに驚いた。試食で食べ比べをしてみて、脂が美味しさを左右するということを実感した。