わいわい塾

開催レポート

2013年5月 久原本家 椒房庵 茅乃舎

2013/05/20

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九州・福岡ではCMでもおなじみのキャベツのうまたれ、椒房庵の明太子、久山町にあるレストラン茅乃舎や茅乃舎だし・・・九州では大変馴染み深い会社ですが、最近は東京ミッドタウンや、グランフロント大阪などでも茅乃舎商品は販売され、全国に知られるほどに成長をしておられる企業です。明太子やだしのファンの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

本日のわいわい塾では、久原本家グループ 株式会社久原本家 専務取締役の荒巻様、総務部広報課の堀下様にお越しいただき、「おいしさのためには手間や時間を、惜しまない」と題しまして、創業からの歴史や、商品の開発秘話、ここまでのブランドに成長するまでのお話を聞かせていただきました。

 

企業の歴史~創業120年~

aramakisanndai.JPG明治26年、福岡市の東区に隣接する久山町(久原村)で「くばら醤油」として創業しました。
創業者は久原村の初代村長を務めていた河邉東介。
自分の財産を崩しながら行政に貢献していた河邉東介に村民のみんなが募金活動をし、それを資金源に醤油屋を創業しました。当時は醤油の一升瓶をリヤカーに乗せ、1軒1軒家庭をまわり醤油を配達する・・・
現在の社長(4代目)が大学を卒業する頃(約36年前)まで、このような方法の商売をしていました。

 

配合調味料を手掛ける

しかし、だんだん醤油の消費量が減少していき、福岡県内だけでも300軒近くあった醤油屋は、200軒くらいまで減っていきました。飲食店でも「配合調味料」を使うところが増えはじめました。
そこで醤油醸造の技術を生かし、お客様の希望に合わせた、さまざまな「配合調味料」を手掛けていくことになりました。

 

株式会社 椒房庵設立

明太子に参入したのは23年前。当時、明太子のメーカーは300社近くもあり、売り上げはすでにピークを過ぎていました。

消費が減少した醤油、価格競争が激しい配合調味料、その上知名度不足からか、なかなかいい人材が集まらない・・・そんな中での挑戦だったので、社内でも大反対が起こりました。

しかし明太子は福岡の特産品。調味料はすでに全国区の大手がシェアを占めていたので、全国で戦うのは厳しいにしても、明太子なら九州・博多で戦えると判断し、「いいものを使った商品」というブランドをきちんと作り上げよう!と挑戦が始まりました。

 

椒房庵の明太子

79syobouan.jpg「明太子」と名乗れるのは、スケソウダラの卵を原料としているものだけです。その中でも、椒房庵は特に国産のスケソウダラを原料とすることにこだわっています。

国産と言っても2種類あります。

①国産もの・・・中型船で10日から2週間かけて漁を行う。品質にムラがありロスも多い。海流が早いところで育っているので卵がしっかりしているが、旨味が少ない。

②近海もの・・・小型の漁船で日帰りで漁を行う。鮮度が良いが価格が高い。水揚げも少なく貴重。皮が薄く粒が小さいが、ねばっとした旨味が特徴。

当初は国産ものを使用していました。見た目ではわからないが、腹から卵を出すと使えないものがあったり、えぐみや苦味があり、明太子の味がぶれてしまうことがありました。

だしの旨味、たらこの旨味を生かしたあっさりしたいいものを作りたい・・・
そうすると、たらこの品質がもろに出て、味にばらつきが生じる・・・
そこで国産ものから近海ものに切り替える決断をしました。
国産ものに比べ、仕入れ価格は15%高くなりました。仕入れ価格は上がるのに、商品の値段は上げられない・・・そのためなかなか赤字から抜け出せませんでした。

しかし、近海ものに切り替えたことで品質は安定し、たらこ本来のうまみや舌触りを生かした繊細な味わいに仕上げることができ、ようやくお客さんが根付きはじめました。その頃にさまざまなメディアで取り上げていただく機会がありました。
・はなまるマーケット。反響がすごくて3日で5回線の電話が鳴りっぱなし。5000円の明太子が2000個売れました。

・どっちの料理ショー
はなまるマーケットの反響を考え、コールセンターで電話を待つも放送内に電話番号が出ずにかかった電話は3本だけ・・・

がっかりしていたのですが、翌日、福岡県内の取扱店舗にはお客様が殺到し、たくさん買い求めてくれるうれしい結果となりました。知名度も上がり、ようやく売り上げも安定してきました。
しかし、近海ものに切り替えたことで大量に仕入れることが難しく、不漁の年では通常の7割しか仕入れられず、売り物がなくなったこともありましたが、現在も近海ものにこだわった商品づくりを続けています。

 

スローフード ~美田・茅乃舎~

kayanoya.jpg2001年ごろから大手企業の食品表示偽装問題などが次々と発覚し、食品に関しての安心・安全が世間で話題となっていました。その頃、4代目である現在の社長が、イタリアで「スローフード協会」を視察し、昔からある食品の加工技術や、その土地にしかない農産物を大事にすることを勉強する機会がありました。
帰国後、さっそく昔ながらの製法で酢や醤油を作る・発酵という技術や穀物や農産物そのモノを研究する「スローフーズ課」を立ち上げました。
研究したものを農家の方々に作ってもらったのですが、思うような量が収穫できなかったり、農業の難しさを痛感。そこで農業も勉強しなければいけないと農業生産法人「美田」を設立し、土づくりから本格的な農業の研究も始めました。
後に、久山町に大きな茅葺屋根が目印の自然食レストラン茅乃舎をオープン。
地元でとれた新鮮な食材を使い、心を込めて手作りしたお料理を提供しています。お客様からお料理のだしや調味料をよく尋ねられるのですが、家庭でプロの料理人のような手間暇をかけることはなかなか困難です。
そこで、お店の味に近く手軽で家庭で利用しやすい形に作り上げたのが、化学調味料や保存料は一切使っていない「茅乃舎だし」です。

 

茅乃舎だし4種の試飲

dasiyonnsyu.jpg・茅乃舎だし・・・五島や平戸のあご・真昆布・鰹節等を粉末にしたもの。天草の塩、粉末醤油で下味がついている。

・減塩だし・・・味噌を減らしたくない、健康上減塩に気を配っている、自分でもうひと手間調味したいという人向け。茅乃舎だしの減塩タイプ。

・煮干しだし・・・国産の煮干しを使用。丸ごと粉砕し旨味が強い。

・野菜だし・・・動物性原料が一切入っておらず、玉ねぎなどの国産野菜を粉末にした洋風のだし。 

参加者の皆さまに試飲していただいたところ「どれも旨味がしっかりして美味しい」「お肉の成分が一切入っていない野菜だしは珍しい」との声もいただきました。

また鰹節の保存方法についてもひとこと。
だしを作る際に鰹節のことも研究。鰹節は酸化するため、冷蔵庫での保存はやめた方が良いそうで、空気が触れないようにきちんと密封し、常温での保存がお勧めだそうです。

 

レストラン茅乃舎の料理長直伝のおいしいだしの取り方

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ひと手間かけて、さらにおいしくしたい方にお勧めの取り方です。

①茅乃舎だし、減塩だし
1.1Lの水にだし4p入れ、菜箸で5回程度振る。(パックの中に水分が回るように、振りすぎず)最低10分置く。
2.強火にかける。

3.ふつふつ沸くくらいの火加減で3分火にかける。

(途中だしパックはさわらない)
4.3分たったら火を止め3分おく。
5.だしパックをざるにとり、お玉の後ろで軽く押す。

②野菜だし
1.1Lの水にだし4p入れ、菜箸で5回程度振る。(パックの中に水分が回るように、振りすぎず)

   最低10分置く。
2.強火にかける
3.ふつふつ沸くくらいの火加減で6分火にかける。(途中だしパックはさわらない)
4.6分たったら火を止め3分おく。
5.だしパックをざるにとり、お玉の後ろで軽く押す。

 ③煮干しだし
1.1Lの水にだし4p入れ、菜箸で5回程度振る。(パックの中に水分が回るように、振りすぎず)
最低10分置く。
2.強火にかける
3.沸いたら弱火で2分火にかける。(途中だしパックはさわらない)
4.2分たったらだしパックをざるにとり、お玉の後ろで軽く押す。 

 

試食のバームクーヘン

ba-muku-hen.jpgレストラン茅乃舎でも販売できるよう、山の中の木の年輪をイメージしたお菓子、バウムクーヘンを開発。
化学調味料や保存料は一切使っておらず開発には大変苦労されたそうです。自然のものだけを原料にしっとりふっくらしたバウムクーヘンは難しく、指導に来てくれていたお菓子屋さんも結局断念。
自分たちで必死でベーキングパウダーに代わるものを探して作り上げた自慢のバウムクーヘンです。
コーヒー、抹茶、プレーンと試食しましたが、どれもふんわり大変おいしく、参加者の皆さんにも好評でした。ただ、無添加なので賞味期限が短く、手間がかかる為、大量生産ができません。美味しさを重視し、作りたてのものをお客様へお届けしているため、博多駅のデイトスや久山の本店などの限定販売です。

 

厳しい品質管理

昨年「FSSC22000」を取得。食品安全マネジメントシステムの国際規格であるISO 22000とそれを発展させたISO/TS 22002-1を統合し、国際食品イニシアチブ(GFSI)が制定したベンチマーク承認規格です。
衛生管理の徹底や安全な原材料の確保や環境への配慮、出庫管理など消費者への安心・安全を追及し続けています。

 

最後に・・・

waiwaijyuku.JPG調味料やだしはただ飾っているだけではなかなか売れません。
キッチンを併設し、すべてのものを味見し、味を確認してもらえるように、アンテナショップ的な意味合いで東京や大阪、札幌に店舗展開しています。

無添加にこだわったものづくりは、非常に手間や時間がかかるため、大量生産もできません。商品だけを卸すということはせず全国のショップはすべて直営店で久原本家の社員が責任を持って販売を行っています。

お客様の声を直に聞き、良いものができたらきちんと伝える・・・それが大事だと思っており、ショップ内には試食コーナーを作り、実際に味わってもら

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い、利用方法を提案しています。

 

現在創業120年ですが、200年、300年を見据えて地域に根ざし「本物」を追及し、信頼される企業に、安心・安全なものをお客様にお届けして行きたいと思います。

お土産で頂いた茅乃舎だし、煮干しだし、野菜だし。それぞれレシピ集「料理読本」がついており、だしを使った簡単で美味しいレシピが紹介されていました。

 

参加者と企業の意見交換(一部)

Q.料理読本に載っている写真はどれもすごく美味しそう。しかも簡単に作れそうなもの
ばかりですが、レシピなどは誰が考えているのですか?

A.プロの料理コーディネーターと提携はしていますが、レシピ製作の専属社員が3人います。また、商品を使っていただいているお客様から提案していただいたものもあります。手間をかけずに簡単に美味しく作れるレシピを日々考えています。

情報を伝えることは非常に大事だと考え、有限会社プランニングbiosを設立し、商品のカタログやコピー、商品パッケージなどセールスプロモーション全般を自ら手掛けています。ですから、本日お渡しした商品カタログや、料理読本は自分たちで作り上げたものなんですよ。


Q.椒房庵は以前から知っていましたが、ホームページやカタログなどから温かさが伝わってくる気がします。
日々成長を続けられる御社の企業理念はなんですか?

A.儲けるとは「信 者」を増やすこと。商売はコミュニケーションだと考えています。
お金儲けを目指すのではなく、信じてくれる人を増やすことが結果的にお金が潤うということ
だと思います。


Q.商品はどこで買えますか?

A.久山の本店にはすべての商品が揃っています。また博多駅や岩田屋でも取り扱っています。
原料にこだわり、大量生産できないものもありますので、できる範囲でしか広げていません。

 

感想などアンケートの声(一部)

  • 創業120年おめでとうございます。以前より茅乃舎の調味料の話を聞きたかったので満足です。
  • 天然の素材を使用しており、安心してこれからも使い続けたいと思います。
  • 「儲ける」とは信者を増やすこと。目先の商売をするのではなく、信頼関係を築くのが一番大切ということに感動。素晴らしいことを教えていただきました。
  • 効率よりもおいしく安全な食品作りを求めている企業スタイルがよく理解できました。
  • 企業の努力、歴史などがよくわかりました。常に先を読み、決断をしていった歴代の社長の考えはすごく興味深かったです。やはり成長する企業はそれなりのことをやってきたのだなあと思いました。
  • 伝統的な食材で作ったものを、最新のツールを使って情報を伝えることを実行されてきた結果が、現在の久原本家に見られます。どうしてこんなに人気があるのかわかったような気がしました。
  • 近海モノを選び原料として使っているなど、原料にこだわった明太子づくりのこだわりが良くわかりました。
  • 鰹節の話は面白かったです。
  • 日本の本来からある伝統料理を支えているのは、この「だし」の世界に原点があるのだと確信しました。
  • なんでも自分たちで作り上げていくという社員の方の試みはすごいなと思いました。
  • 料理読本を見ていると、すぐに作れるものばかりで、主婦にとってもうれしいメニュー本でした。
  • 首都圏の友人へずいぶん前からお土産として茅乃舎のだしを持って行っていたのに、最近東京でも売っていると言われて困っています。全商品を全国レベルにしないで、福岡独自のものを確保してほしいです。
  • 明太子のお話を聞いて、椒房庵の明太子が食べたくなりました。 
  • 会社の歴史から始まり、ごく自然にものづくりの理念にいたるまで、抜群のわかりやすさと見事なプレゼン、久原本家のことが実によく理解できました。
  • 歴代の社長の努力もさることながら、良運・強運の企業と感じました。
  • すけそだらの近海のものを使った明太子の苦労話を聞き、値段が少々高いのも納得しました。
  • あえて競争の激しい明太子業界に飛び込んで、品質・ブランドにこだわることで成長してきた、というお話が大変印象深かった。
  • 明太子、だし、ラーメンはいつも使っていますが、本当に美味しいです。最近は野菜だしにはまっています。これでチャーハンや野菜スープはとってもいいですね。
  • 醤油を自宅に瓶で届けて頂いた時代から使い続けております。
  • 商品を購入するのに福岡市から出掛けるのに便利が悪いので、市内で全商品が置いてある場所が欲しいです。新しくできる商業施設などに出店されてはどうですか?

 

椒房庵・茅乃舎の商品について 試飲試食のご感想

  • 普段から茅乃舎のだしは愛用しています。肉エキスの入ってない、「洋風スープ」を探していました。野菜だしを飲んで、「これだ!」と思いました
  • とても美味しかったです。企業の名前は知っていましたが、商品に触れたことがほとんどなかったので、これを機会にいろんな商品を試してみたいと思います。
  • おだしは東京のお友達に送っていますが、。いつも喜ばれます。
  • バウムクーヘンはあっさりして美味しかったので今度購入してみたいと思います。
  • 椒房庵の明太子はお歳暮などでよく頂いていました。自分では他社のものを買っていたのですが椒房庵のものを求めてみたいと思います。
  • 以前から茅乃舎のだしは使っていました。今回原料などをお伺いし、これからも利用していきたいと強く思いました。
  • 飲み比べてみると、それぞれのお出汁の特長が良くわかりました。またいろいろな活用法があることについても知ることができました。
  • バウムクーヘンに取り組んでいることは知らなかったので、試食は良い機会でした。無添加でぱさぱさ感がない美味しさに感激しました。
  • だしだけを飲むと、茅乃舎だし・野菜だしは良かったが、減塩だし・煮干しだしはちょっと味が薄かった。
  • どの商品も安全安心をコンセプトにしつつ、老舗ながら様々なクライアントを十分研究されつくされていることを感じました。上品で贈り物としても各家庭に着実に使用されていくと思います。
  • だしの飲み比べをじっくりしましたが、各々の違いがはっきりと判りました。料理によって使い分けができると思います。

 

こんな商品があったらいいな!

  • 茅乃舎のマヨネーズを食べてみたい!
  • だしを自分たちでわざわざ取るということが少なくなっているので、アゴや昆布を使った料理を学ぶキットを作ってほしい。
  • 和食・健康的なものでダイエットにつながる食品。
  • 子供にも良い「かつお」「こんぶ」「煮干し」を使ったおせんべいなどお菓子があったらいいな~と思いました。(カルシウムたっぷりで歯にも良い)
  • 無添加のふりかけ!
企業情報

久原本家 椒房庵・茅乃舎

http://www.shobo-an.co.jp/
〒811-2503 福岡県粕屋郡久山町大字猪野1442番地