『ビスネットの昼休みへようこそ♪』第八回 ふぐ

2021/03/08

こんにちは。桜のつぼみも膨らみ、春の訪れを感じる今日こ
の頃。いかがお過ごしですか?
得体の知れない新型コロナの影響をまともに受け、散歩し
ながら桜を見るのが精いっぱいだった去年の春を思い出すと、
あっという間の1年だったような、あれからまだ1年しか経
ってないの?と聞きたくなるような不思議な感じがします。
自粛生活でお花見をはじめ、さまざまなお祭り、行事がなくな
って1年。私たちは、季節ごとのイベントを行うことで、時間
の流れを感じているということを再認識させられた1年でも
ありました。
というわけで、今回はそんな「季節」のイベントとも関係す
るごちそうの話。とっても縁起のいいおさかなの話です♪
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さて、緊急事態宣言があける少し前の出来事です。福岡県が発
行している「福岡の海と食卓を結ぶボランチマガジン『魚っ魚―
とtotto-to』」という広報誌がコンビニに置かれているのを見つ
けました。
この広報誌の特集は「鐘崎のとらふく」(山口県や北九州地方で
はふぐのことを「ふく」といいます。縁起がいいでしょ♪)。宗像
漁協がふぐの延縄漁業について水産エコラベル「MEL(マリン・
エコラベル・ジャパン)」認証を取得したことを記念して、宗像市
鐘崎で行われている天然とらふぐフェアを紹介しています。さす
が、高級魚だけあって、広報紙には料亭や旅館の豪華なとらふぐ
料理がずらり並んでいます。

 

 

持ち帰って「見て、見て~。こんなの出てたよ♪」とその日職
場にいた3人に見せたところ、「うわー、おいしそう♪ふぐ食べた
ーい♡」と熱い反応を見せてくれたのはAさん(北九州市出身)
ただひとり。残りの2名は、微妙な反応。
Bさん「ふぐって、刺身や鍋よりも唐揚げの方がおいしい」
Cさん(東日本出身)「本当にいいものを食べたことがないからだ
と思うんだけど、ふぐのおいしさがよくわからない」「マグロはお
いしいものを食べるのにいくら出してもいいって思うけど、ふぐ
はそんなに気にならない」
かくいう私も東日本出身。広報紙を見て盛り上がってみたもの
の「ふぐがおいしいと思うのは、一緒に出てくるポン酢が美味し
いからでしょ」というのが本心。
もしかして、高級魚って持ち上げられる割に、ふぐってあんまり人気がない?

 

 

さて、そんなふぐに対するぬるい反応を見て、Aさんは「小さ
いころ、うちではふぐはごちそうだったのよ」と言います。Aさ
んの家庭では、秋には松茸、冬にはふぐというように季節ごとに
ごちそうが出され、家族みんなでおいしい、おいしいと言って食
べたそうです。「だから、その季節になると食べたくなるんだろう
ね」と語ってくれました。
確かに、私たちが何かを食べて、おいしいと思うのは、食べ物
の味そのものだけではなく、思い出や習慣という要素がかなり大
きいのかもしれません。となると、ふぐを初めて食べたのは大学
1年のとき、その後も旅館や外食で出されるときぐらいしかふぐ
を食べたことのない私にふぐを熱望しろというのが無理なのか
もしれません。

 


 

ところで、このふぐですが、その消費にはかなり地域差があり
ます。流通量は圧倒的に西日本が多く、特に関西地方では大人気。
なんと、とらふぐの6割は大阪で食されているそう。大阪の人に
とってふぐは「焼肉食べに行こうか」というのと同じぐらいのち
ょっとしたごちそうなんだそうです。
となると、当然、リーズナブルにふぐ料理を提供する店がたく
さんあり、ふぐを食べる機会も多くなるというわけですが、ただ、
これにはからくりがあります。ふぐを調理するためには、そのた
めの資格が必要ですが、この資格を持つ人の数が大阪はダントツ
に多いのです。その理由は…簡単だから。ふぐ調理資格について
は、都道府県ごとにその資格取得の制度が違っていて、大阪府で
は6時間の講習だけでOK。(受験要件として調理師免許や実務経
験を求めるうえ、学科試験と実技試験もある東京都とはえらい違
い)。でも、せっかく取得した資格が他県では使えないなどの問題
があり、認定基準が全国で統一されました。来年度にはこの新基
準での試験の実施が目されているそう。新基準によって、より安
全にふぐが調理されるようになるのはもちろん、現在よりもハー
ドルが下がる地域ではふぐ調理師が増えることが想定されます。
今までよりも、ふぐを提供するところが増えるかな…福岡はどう
なんだろう…

 


 

前述の鐘崎のとらふくフェアは3月末までの開催。ふぐは冬の
食べ物の印象が強いので、その時期で終わるのも当然と思われる
かもしれません。確かに、ふぐの旬は「秋の彼岸から春の彼岸ま
で」と言われています。ただ、これは鍋がおいしい季節であって、
とらふぐが一番おいしいのは、初夏から夏にかけての産卵期前な
んだそうです。(ただ、この時期は毒性も強くなるので、旬には入
れにくい)実際、江戸時代には、ふぐは夏の食べ物とされ、みそ
と醤油で味付けした汁に、なすとにんにくを入れて煮込んだ料理
の記録も残っています。また、最近では、旬とは無関係な養殖ふ
ぐの生産量も増えている(全体の半分近く)ので、冬でなくても
おいしく食べられるそう。

 


 

そんなことを知ってみると「高級」、「冬」、「鍋」という固定観
念でふぐを捉えて、積極的に食べずにきたことがなんだかとても
もったくなってきました。大枚はたいて天然とらふぐのごちそう
を食べに行くのも魅力的ですが、そうでなくてももう少しふぐを
身近な存在にすることはできそうです。なんといっても、養殖ふ
ぐの7割は九州産。九州のおさかなを応援するためにも、もう少
しふぐと仲良くならなければ…まずは、スーパーで売っているリー
ズナブルな「かなとふぐ」を買ってきて、Bさんお好みのからあ
げにして食べるかな…なんて考えているところです。