2018年2月 五ヶ瀬ワイナリー(株)
2018/03/01
今回のわいわい塾は、宮崎県より五ヶ瀬ワイナリー・丸正水産・中千代水産にお越しいただきました。
五ヶ瀬産ブドウ100%で作られる「五ヶ瀬ワイン」と、そのブドウの皮をエサに加えた「五ヶ瀬ぶどうカンパチ桜舞(AUBE)」のお話をうかがい、試飲と試食をさせていただきました。
五ヶ瀬町とブドウ栽培
九州随一のスキー場があることで有名な五ヶ瀬町は、標高が約600mと高く、平均気温が冷涼で農作物の生産に苦労していました。
試行錯誤の末にたどり着いたのがブドウです。はっきりした四季、充分な日照、そして阿蘇火山灰系の肥沃な土地柄がブドウ栽培にぴったりでした。
黒ブドウのブラックオリンピアの試験栽培から始め、白ブドウのナイアガラ、デラウェアと少しずつ品種を増やし、現在10種の栽培を行っています。
五ヶ瀬ワイナリーの誕生
寒暖の差が大きい五ヶ瀬町で作られるブドウは、糖度と酸度のバランスが良く、ワインの熟成に必要な酸度がしっかりあるという特徴を持ちます。また、赤ワイン用の品種がきれいに色づくこともわかりました。どちらも、ワイン原料に向いていることを示しています。
そこで、2003年に五ヶ瀬町長が社長となって、五ヶ瀬町産ブドウ100%にこだわったワイナリーを設立しました。
このワイナリーが、通常の取引価格より高くブドウの全量を買い受けることにしたことで、生産農家の収入が安定し、栽培意欲が上がって栽培面積が広がっています。
また消費者に向けても、生産者の顔が見える安心・安全なワイン、摘み立てのブドウで出来た瑞々しくフルーティなワインの生産地として、五ヶ瀬町を知ってもらう機会が増えました。
このように、五ヶ瀬ワイナリーの設立によって、町の農業振興と地域振興を図ることができるようになりました。
数々のコンクールで受賞
五ヶ瀬ワインは歴史が浅いので、消費者の方に広く知ってもらうため、また現場の士気を上げてより良いものを作るため、積極的にコンクールへ出品しています。
人気商品の「ナイアガラ」は、毎年開かれている「国産ワインコンクール」(日本ワインコンクール)でこれまでに6回受賞しています。
また女性が審査することで話題の「サクラアワード」でも「ナイアガラ」や「デラウェア」が受賞するなど、数多くの賞を受けています。
ちなみに、「国産ワイン」とは国内で醸造されたものを指し、輸入原料を使っていてもよいのに対し、「日本ワイン」は日本産ブドウを100%使用して国内で製造されたワインのことです。
国税庁がこの表示ルールを策定したのが2015年で、2018年10月から完全施行となります。
「日本ワインコンクール」も2015年から名称を変更しています。
ブドウとカンパチの出会い
宮崎県北部にある北浦町は魚の養殖が盛んな町です。稚魚を仕入れ、手をかけて育てて市場に出しています。
しかし、価格はその時々の流通量によって変動し、たとえ生産原価ギリギリであっても売るほかありません。
経営が安定せず、以前は90あった養殖業者も今では20以下に減少してしまいました。
「若者が帰ってこられる環境にするためにも、経営を安定させなければ。」
丸正水産の堀田社長がそう考えていた2016年の夏、町内の居酒屋で偶然居合わせたのが、五ヶ瀬ワイナリーの支配人、宮野さんでした。
「ブドウはポリフェノールやアントシアニンなど抗酸化物質を多く含むことで知られている。果汁を絞った後の皮を提供するので、食べさせて付加価値をつけることに挑戦してみては。」と提案され、試行を重ねました。
五ヶ瀬ぶどうカンパチ桜舞(AUBE)の誕生
乾燥・粉砕させたブドウの皮をエサに混ぜてカンパチに与えてみたところ、添加率0.05%で十分な効果が表れました。
血合いの色が鮮やかなまま変色しにくくなり、身のもちがよくなり、養殖魚特有の臭みや脂っこさが抑えられるようになったのです。
息子さんが帰郷したものの、後を継がせてよいものか迷っていた中千代水産の中田社長も一緒になり、五ヶ瀬ワイナリーの主力ワイン「桜舞(AUBE)」の名を入れたブランド名をつけて、商品化することにしました。
市場関係者からも「生臭くない」「魚嫌いの人にも受け入れられるのでは」「変色しにくいので商品価値が高いまま保てる」と高い評価を受けています。
通常の養殖カンパチよりも2割ほど高い固定価格を設定しましたが、市場の反応は上々です。
収支計画を立てられるようになり、養殖業の未来を見通すことができるようになりました。
試飲・試食しました
~五ヶ瀬ワインの感想を聞きました~
「フレッシュなジュースのような香り」
「香りがすばらしい」「瑞々しい」など。
~五ヶ瀬カンパチ桜舞の感想を聞きました~
「脂がのっているのに、さっぱりしている」
「本当は生の魚が苦手だけれど、これは美味しくいただける」
「食感がとても良い」「臭みがない」など。
参加者との質疑応答
日本食には日本ワインが合うのでしょうか?
これまでは輸入ワインに料理を合わせてきました。市場に日本ワインが増えると、日本食と日本ワインとで、これまでにない固有の組み合わせが生まれるのではないかと期待しています。
歴史の長いワインに、新たに取り組まれるのは大変な挑戦と言えますね。
1,000品種あると言われているワイン用ブドウの中から、五ヶ瀬の土地にあったものをしっかり選ぶこと、育て方を工夫することで、歴史のあるワインに追いつきたいと考えています。
アイスワインは作られていますか?
アイスワインとは、完熟したブドウが樹上で凍り、水分が抜け濃縮するのを待って作るワインです。収穫後に人工的に凍結させ水分を抜いて作る方法もあります。五ヶ瀬ワインでも作れるかどうか、検討中です。
ワインの家庭での保管はどのようにするのが良いですか?
コルクは湿った状態の時に膨張して気密性を保つものなので、ワインがいつもコルクに触れているよう、ビンを斜めにし、日光のあたらない涼しい場所で保存してください。
五ヶ瀬ワインはどこで購入できますか?
イオン九州72店舗で取扱いがあるほか、オンラインショップでもご購入いただけます。
感想などアンケートの声 (一部)
- 五ヶ瀬ワイナリーは五ヶ瀬町100%出資ということで、熱い熱い地域の思いを感じました。また、女性が多い現場とのこと。日本ワインの代表格となる知恵が生まれるのでは。
- ブドウの香りがとてもよく、フルーティで美味しかったです。飲み比べて、ブドウによって味の深み、甘さなど違うことがわかり、楽しいひと時でした。
- スパークリングワインの香りがとても素晴らしく、飲み心地が良かったです。
- 日本ワインの取組みは、美味しいワインで消費者が喜ぶだけでなく、地域の耕作放棄地の復興や地域おこしにつながっており、素晴らしい。
- 今後「日本ワイン」との記載が始まり、原料の産地がわかるとのことで、安心して選べるようになる。
- ブドウ系のフルーツ魚を初めていただきました。生臭みの無いこと、身のきれいなことに驚きました。お腹のところが一番好きです。
- カンパチのお刺し身は臭みがなく、歯ごたえもよく、身の色がすごくきれいでした。
- カンパチ生産者の手間と苦労を考えた。直接消費者に販売するなどして少しでも利益を出して、さらに色々なチャレンジをしてほしい。
- ぶどうカンパチが誕生したお三人の出会いに感動しました。臭みがなくとてもおいしかったです。
- ぶどうの皮を廃棄することなく、カンパチの飼料として有効活用し、付加価値を持った商品としてブランド化する発想は、一石二鳥で素晴らしいと感じた。
企業情報
宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬町桑野内4847-1
TEL:0982-73-5477
HP :http://gokase-winery.jp/
★併設レストラン「雲の上のぶどう」 TEL:0982-73-5470
営業時間:11:00 ~ 15:00 定休日:水曜日(12~2月は水・木休)